みかんな豆知識

木成り栽培とは?食べたら驚く甘さ!みかんや八朔・甘夏などについて解説

木成り(きなり)栽培の柑橘を食べたことがありますか?
スーパーに並ぶ果物は見た目が綺麗でも、味は食べてみるまで分かりません。
特に、旬の柑橘を心待ちにしていたのに、期待外れの味だと残念な気持ちになりますよね。

もし、あなたが「濃厚な甘みとコクを持つ、本当に美味しい柑橘」を探しているなら、木成り栽培の柑橘を食べてみてください。

こちらの記事では、木成り栽培の魅力とその甘さの秘密を解説します。
品種ごとの特徴や、美味しい食べ方もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

リンクをクリックするとその項目までジャンプします。

1.木成り栽培とは?

はじめに、木成り栽培とは何か、以下の4つの視点から詳しく解説します。

・木成り栽培(木熟・樹熟)とは
・通常栽培との決定的な違い
・木成り栽培はリスクが大きいが高価値
・木成り栽培が甘い科学的な理由

木成り栽培(木熟・樹熟)とは

木成り栽培とは、果実を樹になったまま熟すまで育て、完熟状態で収穫する栽培方法です。
「木熟」や「樹熟」とも呼ばれ、自然の力で果実の甘みや風味を最大限に引き出します。

通常の栽培では、ある程度熟した段階で収穫し、出荷後に追熟させることが一般的ですが、木成り栽培では追熟を行わず、樹上で完熟するまでじっくり育てます。

なお「木成り」と「完熟」は同じ意味ではありません。
「完熟」は明確な定義がなく、自然に落果した状態を指すこともあります。
一方「木成り栽培」は、果実が最も美味しくなるタイミングで人の手によって収穫されるのが特徴です。

通常栽培との決定的な違い

木成り栽培と通常栽培の最大の違いは「収穫のタイミング」と「熟成させる場所」にあります。

・通常栽培の場合
果実は完熟の少し手前で収穫され、貯蔵庫で一定期間寝かせる「追熟」を経て出荷されます。
これは、輸送や貯蔵に適した状態で市場に安定供給するための方法です。

・木成り栽培の場合
追熟は行わず、果実が樹になったまま春の日差しをたっぷり浴び、養分を十分に蓄えるまでじっくり熟させます。
完熟した最高のタイミングを見極めて、樹の上から直接収穫するのが特徴です。
つまり「収穫後に熟す」のではなく「樹の上で自然に熟す」という考え方です。

木成り栽培が甘い科学的な理由

木成り栽培の柑橘が「格別に甘い」と感じるのには、植物のしくみに基づく明確な理由があります。

・糖分がたっぷり蓄えられる
植物は光合成によって糖をつくり、それを果実に送ります。
通常栽培では、収穫と同時にこの糖の供給が止まってしまいますが、木成り栽培では果実が樹についたままなので、収穫直前まで糖が送り込まれ続けます。
その分、果実の中には糖がたっぷりと蓄えられるのです。

・酸味がまろやかになる
果実は生きているため、呼吸をしています。
呼吸の際、エネルギー源として「クエン酸」などの酸を少しずつ消費します。
つまり、木成りの時間が長いほど酸が分解され、酸味がやわらいでいくのです。

2.【品種別】木成り栽培の柑橘の魅力

木成り栽培は、様々な柑橘のポテンシャルを最大限に引き出します。
ここでは代表的な品種として下記3つの柑橘の魅力をご紹介します。

・みかん
・八朔
・甘夏

濃厚な甘さの王様「木成りみかん」

木成りみかんの特徴と収穫時期

冬の定番果物・温州みかんの中でも、木成り栽培されたみかんは別格です。
最大の特徴は、濃厚な甘さと深いコク。

通常のみかんは秋に収穫されますが、木成りみかんは約6か月間、年末ごろまで樹上でじっくりと熟成させます。
その間、糖分がどんどん蓄積され、酸味はゆるやかに抜けていくため、味わいはまろやかに。

皮は薄く張りがあり、果肉はとろけるように柔らかく、みかん本来の風味がぎゅっと凝縮。
まるで果実そのものが高級ジュースのような、贅沢な味わいが楽しめます。

木成りみかんの美味しい食べ方

まずはぜひ、皮をむいてそのまま一口。
木成りならではのとろける食感と、濃厚な甘みをダイレクトに楽しめます。

また、みかんの薄皮(じょうのう)には食物繊維やビタミンなど栄養素も豊富に含まれているため、袋ごと食べるのがおすすめです。

デザートとしてはもちろん、朝食やおやつにもぴったり。
小さなお子さまから高齢の方まで、どなたでも美味しく味わえます。

木成りみかんの主な産地

木成りみかんの主な生産地は、温暖な気候に恵まれた地域です。
特に収穫量が多いのは以下の3県です(2023年度)。

1位 和歌山県
2位 愛媛県
3位 静岡県

これらの地域では、日照時間が長く雨が少ないという、みかんの甘みを引き出すための理想的な条件がそろっています。

ほろ苦さがクセになる大人の味「木成り八朔」

木成り八朔の特徴と収穫時期

八朔特有の爽やかな香りと、サクッとした食感、ほのかな苦味が人気の八朔。
木成り栽培によって、その魅力はさらに深まります。
通常12月~2月頃に収穫される八朔を、3月下旬から5月頃まで樹上で完熟させます。
長く熟成させることで酸味が自然に抜け、苦味がまろやかになり、濃厚で驚くほどの甘さを感じられるようになります。
ただし、熟して落下してしまうリスクがあるため、木成り八朔の生産量は少なく希少です。

木成り八朔の美味しい食べ方

外側の厚い皮をナイフで切り、中の薄皮を剥いて食べるのが基本です。
プリッとした果肉の食感と、ほとばしるジューシーな果汁を存分にお楽しみください。

木成り八朔の主な産地

和歌山県が日本一で7割程度を占めています。
特に、伊藤農園のある有田市・有田川町など紀北から紀中にかけて生産されています。

春を告げる爽やかな甘み「木成り甘夏」

木成り甘夏の特徴と収穫時期

その名の通り「甘い夏みかん」として親しまれる甘夏。
木成り栽培にすることで、その爽やかな甘さがさらに際立ちます。
甘夏は12月頃から黄色く色づき始めますが、酸味が抜けて食べやすくなるのは初夏を迎える頃。

それまでの期間、樹上でゆっくりと完熟させさせ、酸味が抜けた頃にもぎとるものを「木成り(きなり)甘夏」です。
太陽の日差しを長い間浴びて樹上で完熟させることで酸味が程よく抜け、すっきりとした上品な甘みが口いっぱいに広がります。
八朔に比べて酸味が穏やかで、よりジューシーなのが特徴。
八朔のほろ苦さが少し苦手という方にもおすすめです。

木成り甘夏の美味しい食べ方

八朔と同様に、外皮と薄皮を剥いてお召し上がりください。
果汁が非常に豊富なので、絞ってフレッシュジュースにするのも贅沢な楽しみ方です。
炭酸水で割って甘夏ソーダにしたり、ゼリーやマーマレードに加工したりするのも、その豊かな風味を活かせます。

木成り甘夏の主な産地

鹿児島県、熊本県、愛媛県など、温暖な気候と豊かな自然が広がる西日本を中心に栽培されています。

3.美味しい木成り柑橘の選び方と保存方法

せっかくの木成り柑橘を手に入れたら、最高の状態で味わいたいもの。
選ぶ際と購入後のコツをお伝えします。

・信頼できる農園から産地直送で購入する
・正しい保存方法で美味しさをキープする

信頼できる農園から産地直送で購入する

木成り栽培は手間やリスクが大きいため、生産している農家は限られています。
だからこそ、本当に美味しい木成り柑橘に出会いたいなら、信頼できる生産者から直接購入するのが一番の近道です。

産地直送であれば、収穫したての最も美味しい状態のものが届きますし、生産者の顔が見える安心感もあります。
ウェブサイトなどで「木成り栽培」や「樹熟」へのこだわりを明記しているかチェックし、実際に購入した人のレビューなども参考にすると良いでしょう。

正しい保存方法で美味しさをキープする

木成り柑橘を美味しく楽しむには、届いた後の保存方法もとても大切です。
以下のポイントをおさえることで、風味と鮮度を長く保てます。

・届いたらすぐに箱から出す
輸送中の湿気がこもることで傷みやすくなります。
まずは箱から出して風にあてましょう。

・傷んだものがないかチェックする
一つ傷んだ実があると、周囲の果実にも影響を与えてしまいます。
早めに取り除いて、全体を長持ちさせましょう。

・涼しい冷暗所で保管する
保管場所は、乾燥していない、10℃前後の冷暗所が理想的です。
暖房のない玄関・廊下・納戸などがおすすめ。

・ヘタを下にして置く
果実の水分が下へ流れにくくなり、みずみずしさをキープできます。
新聞紙などに並べて保管すると安心です。

・食べきれない分は冷蔵庫の野菜室へ
大量に届いた場合は、ポリ袋などに入れて冷蔵庫の野菜室に保管しましょう。
乾燥を防ぎ、より長く美味しさを保てます。

ひと手間かけるだけで、木成り柑橘の自然な甘みとジューシーさがしっかり続きます。
ぜひ、正しい方法で最後までおいしく味わってください。

4.本物の美味しさを味わいたいなら木成り柑橘

今回は、驚くほど甘くて濃厚な「木成り栽培」の魅力についてご紹介しました。

木成り栽培とは、果実を樹の上で通常よりも長く熟成させる栽培方法です。
その間、果実は樹から栄養を受け取り続け、糖度がぐんと高まり、酸味もまろやかに。

もちろん手間やリスクがかかるため、木成り栽培は限られた農家しか行っていません。
だからこそ、その味は特別なもの。


スーパーで手に入る柑橘も美味しいですが、たまには産地や製法にこだわった一品を選んでみませんか?
自然と人の力が詰まった木成り柑橘を、ぜひ一度ご賞味ください。

5.関連記事