みかんな豆知識

有田みかんシステムって何?~みかんの歴史~

祝!日本農業遺産認定☆

みなさんは農業遺産とは何か、ご存じですか?

農業遺産とは、何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、
それにかかわって育まれた文化、
ランドスケープや農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、
世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域を認定する制度です。

農業遺産には国連食糧農業機関が認定する「世界農業遺産」と、
農林水産大臣が認定する「日本農業遺産」があります。
その後者に令和2年の7月に有田地域における「有田みかんシステム」が認定されました!

 日本農業遺産認定基準は8つあり、
もちろん有田市に拠点を持つ伊藤農園にも関りがあるものばかりです。

有田みかんシステムって?

有田みかんシステムとは、日本で初めてみかん栽培で
生計を立てれるまで、技術等を発展させ、
持続可能な開発を可能にし、有田地域(以下有田)を
日本一のみかん産地に発展させた持続的農林業システムのことです。

 近年では、柑橘類はアジア・アフリカを中心
に栽培面積が拡大していますが、
中には粗放的(人の手を入れず、ほとんど自然のままにまかせること
)であったり、資源消費型の栽培を行う地域もあります。
そのため、不安定で持続性が無いこともあります。

 一方有田では、地形の不利(平地の少なさ)を乗り越え、
400年以上にわたる持続的な発展を可能にしてきました。

 では、なぜそこまで長きにわたり、
続けていくことが出来ているのでしょうか?

有田みかんのはじまり

 有田におけるみかん栽培の歴史は、室町時代にまで遡ります。
詳しくはみかんな図鑑の「前編:みかんの歴史 
いつからミカンは我々の食卓にあるのか?」に書いているのでぜひご覧ください♪

有田では室町時代後期より在来みかんの栽培を行っていました
。そこから「八代の小みかん」→「紀州小みかん」→「温州みかん」へと
品種転換が行われ、今の有田みかんブランドに繋がっています。

 江戸時代には、紀州藩が階段園の開墾などの「生産振興」に加え、
日本初のみかん共同出荷組織「蜜柑方」(現在でいうJAのようなもの)
の保護による販売振興を行うことで、平地の少ない有田を支える「みかん産業」を発起しました。
  この、「紀州藩による保護政策」 と「紀州小みかんの味の良さ」によって、
「みかん栽培」が「地域を支える生計の手段」にまで発展しました。

 ちなみに、江戸時代のみかんの大産地は「紀州と駿河、肥後八代」でしたが、
1574年刊行の『日本山海名物図絵』に、「中でも紀州産優れ、皮厚くしてその味甘し」と
記述があるなど、古くから有田は他産地を圧倒してきたことが分かります。

 そんな、みかんと共に時代を過ごしてきた有田ですが、
その道のりは順風満帆とはいかなかったのです・・・

戦争の影響とみかんショック、そしてオレンジの襲来

 太平洋戦争(1941年~1945年)がはじまると、
食料増産のための強制伐採や生産資材の不足等により、
みかん栽培の面積は著しく減少しました。
 しかし、有田では戦後にみかん産業を「復興の柱」と位置づけ、
地域全体の生活を再建し、戦後約15年間で戦前の水準にまで
みかん栽培を回復させ、地域の再興を遂げました。

 ちなみに、伊藤農園が創業されたのが1897年(明治30年)。
戦後の影響をまともに受け、当時は困難を強いられたことだと思います。

1960年代には高度経済成長を背景に、日本のみかん産業は急激に拡大しました。 
1972年には全国のみかんの生産量が300万トンを超え(2018年では80万トン弱)、
生産過剰による価格低迷が発生しましたが、有田では高品質なみかんを生産することで、
市場よりも高い販売価格を維持し、産地を維持し続けました。

 1988年にはアメリカとの「オレンジ・オレンジ果汁の貿易自由化」の決定、
それに伴う国の柑橘園地再編対策事業が実施されました。
この事業は、みかんの需供バランスを回復すると同時に
品質不良園の廃園化を強力に推進する内容のもので、
全国のみかん園で大幅に減反されました。

しかし、和歌山県では、産地間競争が激化した1972年以降でも、
優良園の多い産地であるがために東京・大阪の2大市場で占有率を伸ばし、
みかん園の減少率は小規模にとどめることができました。

 また、果汁も自由化に伴い、果汁輸入量が急増し1991年以降は
国産果汁を上回るまでになりました。これにより輸入果汁で作った
ジュースが低価格で売られ国内メーカーに打撃を与え、
中には工場を閉鎖する場所もあらわれました。

伊藤農園がストレートジュース開発に乗り出したのが1985年、
ジュースが完成したのが1987年なので、
伊藤農園も自由化の影響を受ける真っ只中でジュースを完成させ、
販売を始めたことになります。


 だいぶお話が長くなりましたね。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
今回は現在にいたるまでのみかんのお話をしました。
次回は有田の他産地との違いと人とみかんの関りについてお話したいと思います。

参考文献
有田川町HP
(https://www.town.aridagawa.lg.jp/top/kakuka/kanaya/4/sonota/5880.html)

農林水産省 日本農業遺産とは
(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kantai/giahs_1_2.html)

e-stat 政府統計の総合窓口 作物統計調査 / 作況調査(果樹) 長期累年
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川久保篤志:オレンジ果汁輸入自由化による産地の変貌人文地理 48巻(1996)1号 
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhg1948/48/1/48_1_28/_article/-char/ja/)

世界農業遺産への認定申請に係る承認及び日本農業遺産の認定申請書(R2.4.30案)