みかんな豆知識

有田みかんシステムって何?~有田地域の特徴~

前回は有田みかんの今に至るまでの経緯をお話ししました。
今回は、有田地域と他産地との違いや特徴、人とみかんの関りについてお話ししていきたいと思います。

 まずは、みかんの栽培方法から見ていきましょう。

段々畑 

有田地域(以下有田)でみかんが育てられているのをイメージした際に思い浮かべるのはどんなイメージですか?多くの人はやはり、山で育てられているのをイメージするのではないでしょうか?

有田の地形の特徴として、北も南も東も山地で囲まれ、西は紀伊水道に向けて開けた、平地の少ない地形が特徴です。一見、山に囲まれた農業に不向きな地形ですが、周りの山が夏場の雨雲を遮り、果実の糖度を上げ、台風による強風を弱めることにも一役買っています。また、有田は温暖な気候や長い日照時間、水はけの良い土壌条件にも恵まれています。そのため、みかんの栽培にはうってつけの場所となっています。
平地の少ない地形でみかんを栽培するためには、山の傾斜面も利用しないと限られた土地でしか栽培できません。そのため、山を利用するために作られたのが石垣でできた段々畑(階段園)です。
 みなさんの中で、有田に実際来たことがある方はどれくらい、いらっしゃるでしょうか?来たことがある方はご存じかと思いますが、有田のみかん畑は山の傾斜面に多く見られます。

 有田では、石垣を使った段々畑が少なくとも江戸時代には存在していたといわれています。その時から今まで、有田の人たちは試行錯誤し、造成技術を練り上げたのでしょう。
 
石垣についての詳しい説明はみかんな図鑑の「和歌山県有田市のみかん畑事情」に書いているのでぜひご覧ください♪

苗木

畑のみかんの木を増やす際に、苗木を植えますが、有田では、苗木屋さんが「みかん農家との兼業」により苗木を生産していることも多くみられます。これが、「農家さんの希望に応えることができる高品質な苗木」が作られることに繋がります。また、多くの地域では、苗木を作るために接ぎ木した後1年間育成した「一年生苗木」が多くみられますが、有田では初期生育不良を回避するために「二年生苗木」がよく生産されています。

 伊藤農園でもほとんどの苗木が二年生苗木なんです!

品種

有田で現在栽培されている温州みかんの品種は35品種にのぼります。
和歌山県でみると44品種、愛媛県では37品種と有田は他県に匹敵する量の品種を栽培していることになります!
 つまり、多様な品種をそれぞれの地形・地質に対応させ、栽培してきたということが伺えます。
 伊藤農園では現在、温州みかんは極早生から晩生まで、12品種栽培しています。


このように、他の産地とは一味違う栽培方法に、有田みかんが高品質の秘訣があるのではないでしょうか?
 
 みかんと共に歴史を刻んできた有田では、みかんに関することが生活にも根付いています。

文化

みかんとの関わりが深い有田では、みかんにまつわる文化がたくさんあります。
 有田市にある須佐神社では竹筒と小豆粥を使い、みかんの豊凶が占われる「粥占い」が行われます。
また、江戸時代からある、みかん収穫時に歌われる「みかん採り歌」などもあります。

 ほかにも、紀伊国屋文左衛門の伝説
(みかんな図鑑「有田みかんと紀伊国屋文左衛門」)や

有田特有のみかんの剥き方、「有田むき」
(みかんな図鑑「有田むきって何?」)など、様々なローカル文化が存在しています。

みかんと人、働き方

世界でみてみると、アメリカや南米では大規模農園における「企業経営」のみかん生産をよく見受けられます。また、生産・流通・販売の各過程で細分化されていたりします。
 有田では、「家族経営」を主としており、生産者が流通・販売に関与してきました。この生産者と産地との関りの深さにより、地域全体を発展させてきました。
 
 有田には「みかんによる6次産業」を展開する企業が数多く存在します。
6次産業をしている会社で働くこともメリットには、
農業をしてみたいけど、いきなり農業の世界に飛び込むのは不安・・・
1年を通して安定した収入は得られるのか・・・
きちんとした会社形態のところで働きたい・・・
生産物に関して、栽培からお客さまのもとへどのような動きをするのか知りたい・・・
 いろいろな業務内容のことをしたい・・・

など、働く側の様々な不安やニーズに対応できることがあります。
 もちろん、6次産業を行っている伊藤農園はまさに上記に当てはまります。
伊藤農園で働いている人たちは有田出身の人ばかりではありません。大阪府など関西各地出身の人たちはもちろん、石川県や長野県など様々な場所から就職しています。

 冬になり、みかんの収穫シーズンになると有田は地域全体が繁忙期を迎えます。収穫には人手がいるため、地域外からの季節労働者の方たちもたくさん来られます。
 有田にいながら、いろいろな場所から来た人たちと交流することができるのも有田で働くメリットですね。


ここまで、有田の特徴とみかんとの関りについてたくさんお話してきましたが、いかがでしょうか?

有田では、地域全てが一体となり、みかんと共に成長してきたからこそ、現在までその関係性が深く、長く続いてきたのだと思います。その過程で構築された「有田みかんシステム」が日本農業遺産に認定されたのは非常にうれしいことです。
この記事を通して、日本のみかん業界を牽引してきた、歴史ある有田の魅力が少しでも皆さんに伝わっていればなと思います。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!

参考文献

世界農業遺産への認定申請に係る承認及び日本農業遺産の認定申請書(R2.4.30案)